原作
2017年、著者のたっての願いにより自費出版された同名小説。ベースとなっているのは、社会に居場所を見出せなかった少年の物語である。
昨今、よく飛び交うようになった【LGBT】という言葉だが、いささか一人歩きしているようにも感じる。この言葉は、あくまで性的マイノリティの総称でしかない。本作の主人公は「G」にあたるゲイ、つまり男性の同性愛者である。
昨今、ゲイに関する作品は増えている。オネエ(女性らしさを前面に出すもの)やドラァグクイーン(女装パフォーマー)を描いたもの、女性向けのファンタジー「B L」、一般的に受け入れやすいコメディ、あるいは道徳的・啓発的要素の強い作品が多い。
小説『半端者』は、そのような画一化された描き方ではなく、人間の本質を捉えることに重点を置いている。また、社会的認知が進みつつある〈性的指向〉という「正しさ」を説くのではなく、様々な形で備わっている個々人の〈嗜好〉についても、目を背けず描いている。